東京まで77.7マイル

思いつくこと、思い出すこと、思いあぐねていること。それから時どきワイヤーワーク。

座右の一冊

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日本大学アメリカンフットボール部に所属する現役選手が引き起こした事件を、

連日のように報道していたのがいつのことだったか。

 

報道もほとんどなくなってきた今、

だんまりを決め込んだ大学の思惑通りに事が進むのかどうかは、正直わかりません。

どちらにしても、大概のことは、落ち着くところに落ち着くものだし、

私が案じてもしょうがないことです。

 

そんなことより、一連の報道では、被害に遭われた選手が所属する大学の監督や

コーチの受け答えに、多くの支持が集まっていました。

関西学院大学アメリカンフットボール部の指導者である、彼らのコメントは

明快であり、日大側のあやふやなコメントを淡々と論破し、爽快でした。

 

私は30歳を過ぎた頃、短い間(たぶん3年間ぐらいだったか)だったけれど、

地元の社会人アメリカンフットボールチームに所属していたことがあります。

当時、すでにラグビーをしていたのですが、アメフトのチームに

たまたま同級生がいて誘われたのでした。

アメフトは未経験だけど

ラグビーやってんだから大丈夫だろう」ということでした。

ユニフォームは中々カッコよく、それはNFLのSanFrancisco47ersのコピーでした。

防具一式は安いものではなかったけれど、それを纏う自分を想像すると、

誘いを断れませんでした。

活躍したかと言えば、試合では全く使い物にならなかったことだけは覚えています。

 

当時、私が知る限りでもアメフトは相当マイナーなスポーツでした。

なぜ、私が住んでいる片田舎にアメフトのチームがあったのか、

よくわからないのですが、他に社会人地チームなどあるはずもなく、

もっぱら対戦相手は大学生でした。

 

当時の学生フットボール界では東の日大、西の関学関西学院大学)といわれていた

ようで、(詳しいことはわからないけれど)その構図は現在も続いていたのかと、

ニュースに接して驚いたものです。

 

ところで、私には座右の書とも言える本が何冊かあって、時々、

思いだしたように手に取りペラペラと読み返します。

その一冊が、「コーチング 人を育てる心理学」というハードカバーの本で、

著書は「武田 建」氏です。

私がアメフトを始めた頃、タッチダウンという専門紙でこの本を知り、

買ってきたのだと思いますが、先に書いたように、当時はすでにラグビー

していて、そこではマネージャーも兼ねていました。

マネージャーとして何をするわけでもなかったけれど、チームをまとめるために

何か理論武装をしなくちゃと思ったに違いありません。

 

この本は、基本的にスポーツ関係の本です。

チームの中で、指導者はどう選手をコーチするべきかという本ですね。

 

ところが、内容は想像を超えていました。

こんな考え方があったのかと、本当に衝撃的でした。

さらに、この本の本当の凄さを知ったのは、それから20年も経ってからで、

仕事に必要であるからとマネージメントやコーチングを

勉強せざるを得なくなってからです。

外部研修を始め、結構な勉強の機会を得ましたが、

未だこの本を始めて読んだ時のような驚きに、あったことはありません。

 

武田氏とは、当時、関西学院大学社会学部教授にして、

同大学アメリカンフットボールの監督として、七回の全国区優勝を果たした方です。

  (後に、関西学院大学の学長・理事長も歴任されていました。)

ニュースに接し、現在の関学の指導者の言葉に武田先生の言葉が重なりました。

先生の考え方が風土となって、しっかり根付いているのではないかと想像し、

関係者でもないのに、なんだか嬉しくなりました。

 

どちらの大学も、日本一を目指すレベルにあるようです。厳しい練習を課し、

勝つためにはギリギリのところまで選手を追い込んで行くことに、

それほどの違いがあるとは思えませんが、その根底にあるものの本質は

違っていたのかもしれません。

 

この本を手元に残した自分を、ちょっとだけ褒めてあげたくなったものです。