初めて手に入れたクルマ
20代の前半、初めて自分のクルマを買った。
1970年代の後半だったと思う。
2ドアハッチバックでいわゆるFR車であった。
納車されて数週間後、ドアを開けたら運転席の足元に水溜りができていた。
ぬれているとかではなく、水かさは数センチもあったのだった。
びっくりして直ぐにディーラーに持ち込んだ。
整備の方によれば、
「ラジエーターの水がどこからか漏れたようだ」との診断であった。
さすがにプロである。
見当は素早い。
それはそれとして、私にしてみれば少し無理もして買った初めてのクルマである。
まだ何キロも走っていないし、ぶつけたわけでもない。
当然こういう場合は、改めて新車に交換になるのではと思っていたが、
「しっかり修理しますから大丈夫です」のひとことで、その希望はついえた。
気が小さいので抗議もしなかったせいもあるのかもしれないが、
とにかくクルマというのは余程のことがない限り、
取り替えてもらえないことを学んだ。
当時はクルマのフェンダーミラーがドアミラーに変わろうとしていた頃である。
今は教習所のクルマぐらいでしか見かけなくなったが、
当時のミラーは、ほとんどボンネットの先のほうに付いていたのだ。
私の車は最先端のドアミラーであった。
ボンネットを閉めた後、整備の方が言った言葉が忘れられない。
「あれっ?・・・これ、ミラーが左右反対についてるなあ!?」
できれば、もっと小さな声で言ってほしかった・・・。
踏んだり蹴ったりである。
私はそれ以上何も聞きたくなかったので、その場を離れた。