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思いつくこと、思い出すこと、思いあぐねていること。それから時どきワイヤーワーク。

ジョナサン・アイブ(Apple)に憧れて

 

8月2日、Apple社の株が207ドルを超え、

時価総額1兆ドルを初めて達成した米国企業になりました。

1兆ドルとは現在の為替で計算すると、約111兆円です。

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 日本企業の時価総額ランキングを調べてみると、

第1位はトヨタ自動車で23兆円弱、第2位のNTTドコモは11兆円弱ですから、

そのすごさのとてつもないことがわかります。

 

私はPCもスマホApple製品を使っていますが、

決して熱心なApple信者ではありません。

 

一時期は独創的なデザインと先進的な機能に惹かれ、

それを所有する喜びももたらしてくれたのですが、

最近はそれも薄れてきたように感じます。

 

現在、Appleの稼ぎの6割はiPhoneですが、

他社製品との圧倒的な差別化が出来ているかと言うと、いささか疑問です。

 

今の世代のAppleユーザーは、iPhoneiPadから入ってくるのだと思いますが、

その前の世代はiPodiTunesでした。

 

私はその前の世代なので、入口はPCです。

1998年に発表されたiMacは,

半透明(トランススーセント)の筐体を採用したデスクトップですが、

そのデザインは衝撃的でした。

 

Appleといえば、スティーブ・ジョブズです。

 

2011年に56歳の若さで惜しまれながらこの世を去ってしまいましたが、

今なお世界中のビジネスマン、マーケッターに大きな影響を与え続けています。

 

「今やろうとしていることは本当に自分のやりたいことだろうか?」と語りかけた

スタンフォード大学の卒業式講演は、伝説のプレゼンテーションとして

これからも語り継がれていくことでしょう。

YouTubeでも手軽に見ることができます。

 

「人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」

と言ったスティーブ・ジョブズが、現代の天才であることに異論はありませんが、

私がApple社で好きな人は、別の人です。

 

名前はジョナサン・アイブ(Jonathan Paul Ive)

 

数々のAppleの主力製品をデザインしてきたイギリス人デザイナーで、

現在は、Appleのインダストリアルデザイングループ(IDG)担当

上級副社長の要職にいます。

 

彼を好きになったのは、もちろんその製品デザインにあるのですが、

実はあるとき雑誌で見た一枚の写真が決め手になったのです。

そこには穏やかで静かな微笑を浮かべた彼が写っていました。

 

Tシャツにジーパンというシンプルさは

彼のデザイン哲学を体言していて好ましかったのですが、

当時のIT関係者の多くも同じような格好だったので、

それはある意味普通でもありました。

 

際立っていたのは髪型で、ベリーショートだったのです。

そこまで短くするというのは、

海兵隊とか消防士のような職業の人という思い込みがあったのですが、

素晴らしいデザインをする人が以外にも坊主頭であることに驚いたのです。

 

ひと目見て参ってしまった私は美容院に駆け込み、

出来る限り短く切って欲しいと頼んだのでした。

 

ジョナサン・アイブのようになりたいと言っても、

美容師さんにわかるわけがないので、

せめて写真を持っていくべきだったのでしょう。

そうすれば「お客さん、同じ長さに切ってもこうなりませんよ」と、

教えてくれたに違いありません。

 

切ってしまえば後戻りはできません。

仕上がった鏡の中の自分に、ものすごく落胆したことを今でも覚えています。

 

その髪型はもちろん丸刈りで、ひいき目にいっても

交番に張ってある所在不明の人のような雰囲気でした。

せめて高校球児のような爽やかさがあればいくらかの救いにもなるのですが、

少なくても狙っていたデザイナーといわれる感じは皆無でした。

(もちろん私はデザイナーではないのですが・・・)

 

暑い時期でしたが、出かけるときは失意とともに

しばらくニット帽をかぶっていました。

懐かしい想い出です。

 

女の子が憧れのスターのまねをして髪型を変えることを

「それは無理だろう・・・」と、とても私は言えません。

いたいほど、その気持ちが分かるから。

 

失敗を経験することは、決して何かを失うだけではありません。

失敗することで、他者への寛容を生むのです。

 

少し古い話ですが、2009年「FAST COMPANY MAGAZINE誌」による

「ビジネスの世界で最もクリエイティブな人 100人」の第一位に選ばれたのは、

「Jonathan Paul Ive」その人でした。