東京まで77.7マイル

思いつくこと、思い出すこと、思いあぐねていること。それから時どきワイヤーワーク。

ワンボール ツーストライク(L)

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埼玉西武ライオンズが10年ぶりに優勝したお祝いと、

エンゼルスの大谷選手が新人王を取れることを願って、

タイトルはベースボール風にしてみました。

記事に野球はひとつも出てこないのですが、

スポーツものというか、家族の愛の形を描きたいと思います。

 

前作の「生命の不思議にふれる・・・」に通じるテーマとも言えますが、

愛犬物語ではありません。

 

wired1997.hatenablog.com

 

なお、奇しくも「夢見る人に話しかけてみた・・・」で、

重要な役割を担っていた単語を再度使わないと話にならないので、

前回同様一部を伏せて書いています。

 

wired1997.hatenablog.com

 

 

社会人でラグビーをしていた頃の話です。

 

35を過ぎたころだったと思います。

世間では働き盛りと言われている年頃ですね。

遊び仲間が集まりチームを結成しました。

 

私は一応ラグビー経験者だったのですが、

ほとんどのメンバーが一切経験なしという、

相当無謀なスタートでした。

凝ったユニフォームを作り記念写真を撮った時点で、

目的が叶ったという人が何人もいたので、

当然ですが最初の2年位は1勝も出来ませんでした。

一応、社会人ラグビーのリーグに加入し、

1番下のクラスで戦っていたのですね。

 

ある試合での出来事です。

 

試合開始が迫ってきたのですが、メンバーがそろいません。

ラグビーは15人でプレーするのですが、

当時のルールでは13人いれば、とりあえず試合ができました。

いよいよダメかと諦めかけたのですが、

応援に来ていた仲間に入ってもらうことで、

人数ルールをクリアすることにしました。

姑息な人数合わせですね。

入ってもらったのはリーダー(先輩)の同級生で、

一応バスケットボールをやっていたので、

体力は折り紙つきです。

男前で明るく、その上スポーツマンという、三拍子揃った人でした。

高校の授業で何回かやったことがあると言っていましたが、

ルールなどは全くわからないというのに、気持ちよく入ってくれたのです。

「ボールの近くに来るな」

「ボールを持った敵が向かって来たら、逃げろ」

指示は2つだったと思います。

 

ラグビーはコンタクトスポーツなのですが、

真逆の指示です。

 

ところが試合が始まると、どうでしょう! 

彼のスポーツマンとしてのプライドが許さなかったのか、

ただ血の気が多いだけなのか、

果敢にプレーの輪に入って来るのでした。

 

ドラマはここからです。

 

あろうことか彼にボールが渡り、

味方にパスする間も無く相手のタックルを受けました。

彼はそのままうずくまり、下腹部を押さえて起き上がれません。

試合ではよくある事なので、とりあえずグランドの外に出てもらい、

何事もなかったかのようにプレーが再開されました。

 

ノーサイドのホイッスルが吹かれ、

ようやくその先輩のことに気を向けると、

植え込みの陰で横たわったままです。

骨折ではなさそうですが、痛めたのは股間のようでした。

 

大事を取り、後輩の運転で日曜当番医に診てもらうと、

「きん◯まぶくろの皮が破れた」ということでした。

   *品がなくてすいません。

 

そりゃあ痛いだろうと言いながら、

試合に出てもらった恩などすっかり忘れ、

みんなで大笑いしてその日は終わりました。

 

翌朝、リーダーに「彼が入院した」との連絡が入りました。

“きん◯まぶくろの皮が破れた”くらいで入院か?とは言え、

怪我の経緯もあるので病院に行ってみると、

病室の外でフィアンセが泣いていました。

半分冷やかしで来たというのに、そんな雰囲気ではありません。

 

聞けば、

「たま」が潰れてしまったので、摘出手術をするとのこと。

全く笑い事どころではありません。

これからというときに、彼氏が「たまなし」になってしまった悲しみは

いかほどだったでしょうか。

「たま」が無ければ子が授からないので、彼女にしてみれば切実です。

 

手術は無事終了しました。

 

幸いだったのは、「たま」のひとつがたまたま助かったことでした。

 

彼は「たま」をひとつ無くした位でメゲる人ではなく、

この方がバランスが良いとか何とか言って、

夜の街では見せびらかしていたそうです。

突き抜けた明るさです。

なかなか真似のできることではありません。

 

数年して、先輩に子どもができたことを知りました。

なんと双子でした。

 

たいしたもんだと、心から思えることはそんなに無いものですが、

このときは心底「たいしたもんだ」と思えたのでした。

流石に、先輩に「たいした、たま」とは言えませんから・・・。

 

それでは、また。