我が心の富士山(Fujiyama)
富士山を見てきた。
気取った書き出しだが、これは誤解を招きかねない表現なので、
改めて正確に書く。
仕事で静岡の方に行ったら、富士山が見えた。
これではこの先、誰も読んでくれない気がする。
文章は難しい。
どうであっても、富士山が見られたのは嬉しいものだ。
「晴れてよし 曇りてもよし 富士の山 もとの姿は 変わらざりけり」
こうありたいと思う。
30代になるかならないかの頃だった。
後輩がジャパニーズレストランを出した。
日本料理店ではなく、わざわざジャパニーズレストランとうたっていたのには
一応の理由があって、彼がアメリカ帰りだったからだ。
日本料理の店を出すのにアメリカで修行してきたというのは
全く説得力がないので、流石にそうは言わなかったが、
開店当時はむやみにアメリカ帰りを強調していた気がする。
大きな男で、サイズはまさにアメリカンだった。
ある時、遊びに行った公園で、遠くの方から私を呼ぶ声がした。
ウシのような大きな犬を連れた彼だった。
遠くにいるはずの彼とその犬が遠近法を無視するかのごとくの遠近感で、
まるで近くにいるように見えた。
(遠近感:遠くのものは、遠く見えること。遠くのものは、小さく見えること。)
不思議な存在感と感覚だった。
彼は海産物問屋の御曹司だったので、彼の人並み優れた体格の良さは、
小さい頃から十分すぎるカルシウムをとっていたからに違いない。
店のメニューはどれも美味しかったが、
思い出すのは生まれて初めて食べた「カリフォルニアロール」である。
寿司にアボガドが入っていると言われたので、アメリカ人はバカかと思ったが、
食べたら意外に美味しかった。アメリカ人もなかなかやるのだ。
レストランの名前は「Fujiyama」といった。
小さく富士山とも書いてあった。
とてもいい店だったけど、今はもうない。