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思いつくこと、思い出すこと、思いあぐねていること。それから時どきワイヤーワーク。

やられたぜ!三題 その2

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前回の“その1”では、店に三度入られたことを書いた。

 

wired1997.hatenablog.com

 

その度に現場検証をするのだが、これが結構手間取る。

店を閉めておく必要はないけれど、

パトカーが停まっている駐車場に、敢えて入ってくるお客さまはいない。

当然その間は売り上げもない。踏んだり蹴ったりである。

 

ご近所の方は、その様子をそっと見ているわけで、

その後さり気なく「何かあったんですか?・・・」と、

聞いてくることになるのだが、何度も同じように答えなければならない。

「物騒だからお互い気をつけましょう」みたいなことである。

 

さて、今回は本店の話である。

 

私は車で店まで通っていたのだが、駐車場がないため、手前に駐車場を借りていた。

そこから歩いて行って店の前を横切り、

反対側の端にある電動シャッターのスイッチで店を開けるのだ。

要するに店の端から端まで歩いてから店を開けるということである。

 

店は道路に面していて、道路とシャッターの間は50センチぐらいしか離れていない。

四枚あるシャッターが全部上がっていく様子をぼんやりと眺め、

頃合いを見て店に入るのがルーティンであった。

 

ある時、上がって行くシャッターを眺めながらも、全体の景色に違和感を覚えた。

gagagagaga~という、シャッターが上がっていく音に変わりはないし、

いたずら書きがされてるわけでもない・・・・が、

「あっ!」と、一瞬思考が止まった。

「あれっ?」と、いきなり目も覚めた。

 

道路とシャッターの間にあった、あるべきモノが、

そこにないことに気が付いたのだ。

跡形もないとはこのことだった。

 

目の前を通り過ぎたときに気が付かず、

振り返ってシャッターのスイッチを押すときにも気が付かず、

ぼんやり店の全体を視野に入れてもなお気が付かなかったのに、

突然「はあ~あ~!」となってしまった。

 

なんと、コンドームの自動販売機(以下:自販機)が消えていたのだった!

 

少し解説をすると、当時コンドームは薬局・薬店か自販機でしか手に入らなかった。

自販機は店で買うのがなんとなく気恥ずかし人に支持されていて、

店が閉まったあとにそっと買うために必要だったのだ。

薬局の店頭には大体置かれていたが、今はドラッグストアーも多いし、

そもそもコンビニで購入できるので最近はあまり見かけない。

 

それはジュースの自販機と違ってとても小さいし、チャチだ。

 

全体は金属プレート(30センチ×30センチ)から伸びたポールの上部に

本体が付いている。

金属プレートは地面に打ち込んだ4個のボルトに合わせ、ナットで留める。

後付けの場合はだいたいこのように設置するものだった。

つまり、4本のナットを外せば簡単に持っていけるともいえるのだった。

 

電気コードもしかりである。

後付けなので、電源は店の中から引っ張っていた。

コードは降りたシャッターの下を通りポールの下から機械に繋がっているのだが、

見えているのは30センチぐらいだったであろうか。

コードを切るのは感電の恐れもあるだろうと考えるのは素人の発想で、

たぶん何てことのない作業なのだろう。

きれいに切られていた。

 

しかし、なぜ直ぐに気が付かなかったかというと、

現場があまりにもきれいだったから。

とにかく何も残っていなかったのだ。

コードはシャッターのところでピッタリ切られていたし、

ナットもなく、あたかも元々なにもなかったかのごとくだった。

 

ジュースが飲みたくて自販機を壊す人はいない。目的は現金だ。

なので自販機の開発の歴史は盗難との戦いでもあり、

自販機荒らしを考える人に「割りが合わない」と思わせるように進化してきた。

いくらでも頑丈にできるのだろうが、

コストもかかるし重量だってあまりに重くなれば問題だ。

 

それに比べてコンドームの自販機はまったくチャチなので、

「割りに合うかどうか」はともかく、

現金狙いであれば容易に実行できる構造である。

 

ところが、うちに来た賊は違ったのだ。

きれいさっぱり持っていってしまった。

 

例によって現場検証である。四度目になる。

 

当時、偽の500円硬貨を使った自販機被害が多発していた。

これは、つり銭を狙ったものであるが、自販機を壊す必要もなく、

たとえ人に見られていても疑いを持たれることはなかったので、多発していたのだ。

偽500円は“ウォンの国の本物の硬貨”であったが、

大きさや重量がとても似ていたのだという。

その後、センサー技術の向上で類似の犯罪は減ったようだが、

どちらにしても、やられるのはジュースの自販機のはずだった。

 

コンドームの自販機はノーマークだと思っていたので刑事さんに尋ねると、

やはり滅多にないと言う。

さらに、「そっくり持っていかれることなんてあるんですか?」と聞くと、

聞いたことがないと教えてくれた。

ワンボックス・カーを横付けすれば陰になってほぼ見えないし

「まあ5分もかからないでしょう」とのことだった。

 

それにしても、なぜそっくりなのかは今でも謎である。

世間にはいろいろな性癖を持った人がいるに違いないから

コンドーム自販機のコレクターだったのかもしれない。

電気の知識が少しあればコードは直せるだろうし、

自宅の部屋において一人“にやにや”しているのだろうか?

鍵は簡単に開けられるのだろうか?

現場検証の間はそんなことを考えていた。

 

目が覚めたのは刑事さんの次のひとことだった。

「機械が捨てられて、まあどっかの河川敷あたりで見つかった場合は、

申し訳ないんですが引き取りに行ってもらえますか?県外ってこともあります」

依頼というより有無を言わせない感があった。

「はあ~あ~」と言ったきり

あまりに理不尽で「はい」と、すぐには答えられなかった。

 

幸いにして、その後何年たっても「発見されました」との知らせはなかった。

やっぱり、マニアだったのだろうか・・・。

 

追記

コンドームネタとしては、1981年にリリースされた「スネークマン・ショー」

(SNAKEMAN SHOW)のアルバムにある「これ、なんですか?」が最高です。

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レコードでは、B面8曲目ですね。

このアルバムのプロデュースは桑原茂一細野晴臣

ゲストミュージシャンはYMO、加藤和彦ムーンライダーズ

その他そうそうたるメンバーです。

確認したらYouTubeにもありますし、派生ネタもいろいろ出ていました。

「これ、なんですか?」は音楽というよりコントですが、

興味がありましたらお聞きください。

同じアルバムに収められている「正義と真実」も大好きだったので、

よかったらこちらもチェックしてみてください。

やはりYouTubeにあります。