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思いつくこと、思い出すこと、思いあぐねていること。それから時どきワイヤーワーク。

仕事あるある(L)

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使い勝手の良い言葉がある。

使い古されているにも関わらず、

それを使うことで、

何となくみんなが納得してしまうような、

言ってみれば便利な言葉。

その言葉を聞くと、まるで思考停止をしたように、

それ以上深く考えることもなく、

みんなが「そうだよね」となる不思議な言葉。

 

コミュニケーションの基本の一つに、

言葉の定義づけというのがある。

一つの言葉をどう捉えるかは様々で、

人によってその幅は相当あるものだ。

なので事前に合わせておかないと、

後でひどいことになることも多々ある。

これって、誰しも経験があることに違いない。

 

だからコミュニケーションの場においては

言葉の意味をはっきりさせておくべきだけど、

あえてはっきりさせないことで、

安心して使える言葉というのもあるようだ。

例えば、

「基本に、もどろう!」というフレーズがある。

「基本に、かえろう!」とも言うけれど、

意味にそれほどの違いはない。

 

このフレーズが最も使われる場がどこかと言えば、

ビジネスやプロ・スポーツの世界だろう。

どちらもプロセスより結果が求められる場だ。

プロセスを楽しめたほうが、

良い結果に繋がる確率が高くなる気がするけれど、

どうであれ結果が一番大事であり、

結果を出さなければ評価されない世界である。

いつまでも同じ事を繰り返している限り、

他者を負かすことは出来ないので、

現在の取り組みを深化させることなく、

唐突に新たな考え方が、度々導入される。

年度が変わるたびに、リーダーが変わるたびに…。

 

そもそも、

期待される成果を出せないことはよくある。

「頑張ったら良くなる」というのは、

児童図書の世界ではともかく、

現実にはなかなか難しいものだ。

正直言って「頑張っても良くならない」という方が、

ずっと多いような気がする。

「だから頑張らなくてもいい」ということではなく、

とにかく成果を出すのは簡単なことではない。

更にそれを維持することは本当に大変である。

 

そんな時、その状況をなんとか打破して、

次のステージに向かうために、

なぜかこの

「基本に、もどろう!」「基本に、かえろう!」

と言うフレーズが好んで使われるような気がする。

問題は「使う」のではなく「使われる」と言う点。

「もどろう」も「かえろう」も

どちらも語尾は「~ろう」と、

あたかも優しく促しているようでいて、

実際に使われる場面では、

指示というか命令であることが多い。

基本、指示・命令は上の方から降りてくる。

「もどろう!」とは「もどれ!」という意味だ。

「かえろう!」とは「もかえ!」という意味だ。

能動的ではなく、受動的である。

自らが自分自身を諭すという場合はまだしも、

自らが望んでと言うか、

自らその必要性を感じていないのに、

なぜか「基本にもどろう!」と、

突然リセットされる感じ。

 

驕りや慢心をいさめるという意味では

分からないではないが、

「基本にもどろう」と言うだけでは

はなはだ具体性に欠けるので、

行動に結びつけると言う点に関しては、

あまり良い指示には思えないのだが、

なぜか誰も異を唱えない。

 

グループや組織のリーダーが

「基本にもどろう」と言い出したら要注意だと思う。

これって、実は恥ずかしげもなく

「ノー・プランです」

と言ってるようにしか思えない。

せめて「初心に、もどろう!」と言って欲しいけれど、

これ以上は書かないでおこう…。

仕事あるあるでした。

 

それでは、また。