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思いつくこと、思い出すこと、思いあぐねていること。それから時どきワイヤーワーク。

ウェザリングもまた楽し 〜柳生真吾さんに捧げる〜

 

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私がWiredで使うワイヤーは鉄です。

 

その、鉄のワイヤーは無彩色、つまり灰色です。

印象としてはほぼ単色で、濃淡や明暗もほとんどありません。

しゃれてモノトーンという感じでもなく、とにかく地味です。

 

それでも最初は表面の亜鉛メッキが鈍い光沢を放っているようにも見えますが、

その輝き(?)も時間と共に失われ、場合によっては錆がでてくることもあります。

これは経年変化と呼ばれる現象ですが、

これを人為的につくることをウェザリングと言い、

いろいろな分野で行われています。

日本語では風化ですね。

 

ウェザリングが施されたもので一番目にする機会が多いのは模型でしょうか。

模型に塗装をするのですね。

塗装の出来はそのまま作品の出来不出来を左右するでしょうから、

塗装技法の習得は必須ではないかと思われます。

私はモデラーではないのですが、

素晴らしい作品になるとそのリアリティーに圧倒されます。

 

それから家具づくりにおいても、いろいろな方法で行われているようです。

新しい木材に塗りこむだけでアンティーク材のような風合いを出せるワックスなど、

手軽に楽しめるものもあります。

 

人為的にやっておいて、その上で人為的に見せないようにすることが

ウェザリングの技術であり、様々な技法が試されているようです。

真新しいものをわざわざ使い古したようにすることに違和感を持つ人にとっては、

理解しがたい行為かもしれませんが、

場合によっては、それにより価値が増すこともあるのですね。

 

一般的な鉄のワイヤーは、長い時間をかけて少しずつ錆びていきますが、

これを塗料によって経年変化を表現することも可能です。

赤錆や青錆など幾つか種類がありますが、あくまで塗料ですから本物の錆のように、

触ったからと言って手に錆が付くことはありません。

塗った事で本当の錆が発生する事が抑えられるという効果があるかもしれませんが、

何だか本末転倒というか、ややこしい話ですね。

 

ガーデニングで使われるテラコッタの鉢も、

材質や仕上げによって変化の度合いは違いますが、

日差しを浴び、雨にうたれ、風にさらされることで少しずつ表情が変わってきます。

用土やテラコッタの中に含まれていた何がしかの成分が表面に滲み出て、

時間の経過と共に少しずつ新たな表情を作っていくのですが、

その表情をウェザリングによって作り出すことも可能です。

それはそれでなかなか楽しい作業です。

 

今は亡き柳生真吾さんの著書「これがわれらのコンテナーガーデン」では、

なんとブルガリアヨーグルトをテラコッタ鉢に塗っていました。

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柳生さんといえば、

1989年に柳生家がOPENした「八ヶ岳倶楽部」がよく知られています。

そこで、真吾さんに大きなハンギングバスケットをプレゼントしたことが、

まるで昨日のことのように思い出されます。

 

翌年、「Wired」がギフトショーに出展した時には、

わざわざブースまで訪ねて来てくれました。

律儀で男気があって、忘れられないひとです。

お世話になりました。

 

懐かしくなって久しぶりに「これがわれらのコンテナーガーデン」を

ペラペラめくっていたら、慎吾さんのサインを見つけてビックリ!

すっかり忘れていました。ごめんなさい。

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話が横道に行ってしまいました。こっちもごめんなさい。

 

ウェザリングも楽しいのですが、私が鉄のワイヤーに魅力を感じるのは、

あえてウェザリングを施さなくても風化が楽しめるからです。

 

どちらにしても、

経年変化を「なんか・・よごれてきた」と思う人にはわかりにくい世界ではあります。