4文字に込められたのは、担当者の強い意志か(L)
「きん◯ま」の話が続いたので、
貴重な女性読者に見限られたかもしれません。
ですので、今回は堅い話です。
優れたキャッチコピーは、
それを目にした人が行動を起こすチカラを持っています。
行動とは、送り手側が期待した行動です。
「なんだろう」とか「へえ~」と思われるだけでは不十分なのですね。
商品に付いたキャッチコピーの評価は、
結局その商品がどれだけ売れたかどうかにかかっています。
「いいね」と言われるのと、
実際に買ってもらうこととは全く別です。
ところで私が勤務している会社は、
小さな工業団地のような地区の一角にあります。
道路を挟んだ隣は食料品工場で、
周囲はぐる~とブロック塀で囲まれています。
高さは2メートル位でしょうか。
10日ほど前、そのブロック塀に、
パウチされたA3サイズの告知書(?)が張り出されました。
それも、ほぼ10メートル間隔なので、ものすごく目立ちます。
書かれているのは赤の背景に白抜きで、たった4文字でした。
「近づくな」
これだけです。
ブロック塀の倒壊による事故等が度々ニュースになるので、
リスク管理の一環で自社のブロック塀を社内で評価したところ、
なんらかの問題が見つかったのではないかと推測できます。
どこで地震が起きても不思議がない時代です。
高さ2メートルのブロックはそのまま凶器になりうるでしょう。
それにしても、私が気になったのはその4文字です。
「近づくな」というのは命令形です。
この4文字に落ち着くまでに、どんな案があったのかはわかりませんが、
もう少し穏やかな表現も社内で検討されたに違いありません。
にも関わらず、
「近づくな」です。
社内文書ならともかく、何と言っても社外に向けたもので、
この言い方はないだろうと・・・。
そもそも、このブロック塀の横を歩いている人を見たことがありません。
なので、誰に向けて発信しているのかがよくわからないのですが、
事故と言うのは、偶然が重なって起こることはよく知られているので、
万一に備えたのだろうと推測されます。
しかし、道路は工場の敷地ではありません。
そこを通行する人や車に対して「近づくな」というのは、
注意喚起だとしても相当に乱暴だと感じます。
理由も書かれていませんし、いつまでなのかもわかりません。
ガンコ親父の住む一軒家ならともかく、
地元では名を知られた企業ですから、
せめて「近づかないでください」ぐらいの謙虚さがあった方が、
よいのではと、ちょっと驚きました。
張り出してから1週間ほどして工事が始まり、
基礎だけ残して「張り紙」と共にブロック部分は撤去されました。
危険かもしれないブロック塀は、
数週間後には安全性を強化して生まれ変わるでしょう。
工事を見ていて、改めて考えました。
「近づくな」という、
高圧的なメッセージがもたらす負のイメージを心配してしまうのは、
自分が広報部に身を置いているからかもしれません。
会社にとって、そのブランディングは提供する商品やサービスだけではなく、
対外的に発信する全てのものが、その会社のイメージを作って行くのです。
良いイメージを持たれるメリットは間接的かもしれませんが、
とても大きいのです。
そんなことを考えていたのですが、より本質的なリスク避けるためには、
むしろこう書くべきだったのかと思えてきたのでした。
「近づかないでください」と書かれていたら、
人は近づきたくなるものなのかもしれません。
何気に近づいて、間が悪いことに大きな地震が起きたらどうでしょう。
担当者は工事が終るまでのリスクを少しでも減らすために、
あえて中途半端な表現を取らなかったのではないかと。
「今そこにあるかもしれない危険」を
「今そこにある危険」と判断した担当者の危機意識が、
「近づくな」の4文字に込められていたのではないかと。
そうだとすれば、
これは素晴らしいキャッチだったのかもしれません。
皆さんは、どう感じますか?
それでは、また。