東京まで77.7マイル

思いつくこと、思い出すこと、思いあぐねていること。それから時どきワイヤーワーク。

4文字に込められたのは、担当者の強い意志か(L)

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「きん◯ま」の話が続いたので、

貴重な女性読者に見限られたかもしれません。

ですので、今回は堅い話です。

 

優れたキャッチコピーは、

それを目にした人が行動を起こすチカラを持っています。

行動とは、送り手側が期待した行動です。

「なんだろう」とか「へえ~」と思われるだけでは不十分なのですね。

商品に付いたキャッチコピーの評価は、

結局その商品がどれだけ売れたかどうかにかかっています。

「いいね」と言われるのと、

実際に買ってもらうこととは全く別です。

 

ところで私が勤務している会社は、

小さな工業団地のような地区の一角にあります。

 

道路を挟んだ隣は食料品工場で、

周囲はぐる~とブロック塀で囲まれています。

高さは2メートル位でしょうか。

10日ほど前、そのブロック塀に、

パウチされたA3サイズの告知書(?)が張り出されました。

それも、ほぼ10メートル間隔なので、ものすごく目立ちます。

書かれているのは赤の背景に白抜きで、たった4文字でした。

「近づくな」

これだけです。

 

ブロック塀の倒壊による事故等が度々ニュースになるので、

リスク管理の一環で自社のブロック塀を社内で評価したところ、

なんらかの問題が見つかったのではないかと推測できます。

どこで地震が起きても不思議がない時代です。

高さ2メートルのブロックはそのまま凶器になりうるでしょう。

 

それにしても、私が気になったのはその4文字です。

「近づくな」というのは命令形です。

この4文字に落ち着くまでに、どんな案があったのかはわかりませんが、

もう少し穏やかな表現も社内で検討されたに違いありません。

にも関わらず、

「近づくな」です。

社内文書ならともかく、何と言っても社外に向けたもので、

この言い方はないだろうと・・・。

 

そもそも、このブロック塀の横を歩いている人を見たことがありません。

なので、誰に向けて発信しているのかがよくわからないのですが、

事故と言うのは、偶然が重なって起こることはよく知られているので、

万一に備えたのだろうと推測されます。

 

しかし、道路は工場の敷地ではありません。

そこを通行する人や車に対して「近づくな」というのは、

注意喚起だとしても相当に乱暴だと感じます。

理由も書かれていませんし、いつまでなのかもわかりません。

ガンコ親父の住む一軒家ならともかく、

地元では名を知られた企業ですから、

せめて「近づかないでください」ぐらいの謙虚さがあった方が、

よいのではと、ちょっと驚きました。

 

張り出してから1週間ほどして工事が始まり、

基礎だけ残して「張り紙」と共にブロック部分は撤去されました。

危険かもしれないブロック塀は、

数週間後には安全性を強化して生まれ変わるでしょう。

 

工事を見ていて、改めて考えました。

「近づくな」という、

高圧的なメッセージがもたらす負のイメージを心配してしまうのは、

自分が広報部に身を置いているからかもしれません。

会社にとって、そのブランディングは提供する商品やサービスだけではなく、

対外的に発信する全てのものが、その会社のイメージを作って行くのです。

良いイメージを持たれるメリットは間接的かもしれませんが、

とても大きいのです。

 

そんなことを考えていたのですが、より本質的なリスク避けるためには、

むしろこう書くべきだったのかと思えてきたのでした。

 

「近づかないでください」と書かれていたら、

人は近づきたくなるものなのかもしれません。

何気に近づいて、間が悪いことに大きな地震が起きたらどうでしょう。

 

担当者は工事が終るまでのリスクを少しでも減らすために、

あえて中途半端な表現を取らなかったのではないかと。

「今そこにあるかもしれない危険」を

「今そこにある危険」と判断した担当者の危機意識が、

「近づくな」の4文字に込められていたのではないかと。

 

そうだとすれば、

これは素晴らしいキャッチだったのかもしれません。

 

皆さんは、どう感じますか?

 

それでは、また。